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2050年エネルギー変革に向けた耐熱金属材料の信頼性評価と新材料設計

 火力発電プラント用耐熱鋼・合金のクリープ疲労損傷評価・低減技術構築

 日本では、脱炭素化に向けて、太陽光や風力発電などの変動性再生可能エネルギーの割合を増やして、火力発電を減らそうと努力しています。 しかし、火力発電をやめてしまうわけにはいきません。 何故なら、天候や季節に左右される再生可能エネルギーの出力変動の調整は、蓄電池のみでは行えず、主に火力発電がその役割を担う必要があるためです(図3参照)。 その際には、火力発電は数時間から数日の間隔で起動と停止を繰り返す負荷変動運転を強いられ、実際にそのような運転が現在既に行われています。

 火力発電の負荷変動運転では、主蒸気管のヘッダー等の耐熱部材にはクリープ損傷に加えてクリープ疲労損傷が生じることが強く懸念されています。 また、火力発電の新設が難しくなっている背景を受け、プラント・材料の経年劣化・損傷評価は以前に増して重要な課題となっています。

 材料は高温(融点(絶対温度)の3割以上)では、弾性変形程度の低い応力でも時間依存型の変形(クリープ)を生じます。 耐熱部材の損傷は、火力発電がベースロードで運転される場合には主にクリープで生じますが、起動・停止を繰り返す負荷変動運転ではクリープと熱疲労の両方が生じるクリープ疲労になる可能性があります。

 このような背景を受け、耐熱鋼のクリープ変形に及ぼす応力変動の影響を調べる研究に着手しています(図4)。 また、熱疲労は、材料の熱膨張・収縮に起因するため、材料の熱膨張係数を抑えた耐熱金属材料の創製・設計にも挑戦しています(図5)。

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図3 脱炭素社会における電力供給
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図4 応力変動クリープ試験イメージ
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図5 耐熱材料の低熱膨張化を目指した研究