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2050年エネルギー変革に向けた耐熱金属材料の信頼性評価と新材料設計

 高温水素雰囲気クリープ試験

 1.研究の目的と背景

 2050年カーボンニュートラルの実現に向けては、輸送、発電、内燃機関、水素製鉄等における水素利用技術の確立が重要となります。特に、再生可能エネルギーを利用した高効率高温水電解水素製造装置、水素ガスタービン発電、水素還元製鉄等では、高温水素環境中で長時間使用可能な耐熱材料が不可欠となります。一方で、高温水素環境下における耐熱材料のクリープ変形挙動については十分な知見が得られていません。 本課題では、実用的に重要となる配管用耐熱部材のクリープ強度に及ぼす高温水素環境の影響を将来的に把握することを目指し、中空試験片を用いた高温水素雰囲気クリープ試験法を構築するとともに、複数の耐熱材料を対象としたデータ取りを進めています。

 2.研究内容

 (1)中空試験片を用いたクリープ試験機の製作

 中空試験片を用いた高温水素雰囲気クリープ試験機の設計・製作を行いました。図3に製作したクリープ試験機の模式図を示します。水素ガスは水素発生機より導入し、比較試験のため空気を別系統で導入可能な機構としています。水素ガスまたは空気を導入する配管には、内径2 mmのステンレス管を用い、試験片へ溶接接続する設計としています。また、安全対策として、試験片を通過後に排出される水素ガスは天井排気口へ導く構造とし、水素検知器を2カ所(水素発生機周辺および試験機上部)に設置するとともに、逆流防止弁を導入しています。さらに、試験片のクリープ破断時には、水素導入を自動停止する機構を設けています。図4に制作した高温水素雰囲気クリープ試験機の外観写真を示します。

 (2)中空試験片を用いた高温水素下クリープ試験と試験法構築

 本試験法により得られた試験結果の一例を図6に示します。本研究で実施したクリープ試験条件においては、ガス環境の違いによりクリープ曲線に明瞭な差異が認められています。中断時のクリープひずみは、空気/空気環境と比較して空気/水素環境では約2倍の値を示しました。 本研究において設計・構築した中空試験片を用いた高温水素雰囲気クリープ試験法について、その有効性および課題を整理しました。 ・本試験法により、10-5 h-1オーダーのひずみ速度計測が可能であり、SUS316L材を対象とした複数試験において、水素/空気環境試験と空気/空気環境試験との間に有意な差異が現れることを確認しました。 ・低Ni濃度から高Ni濃度までを含む各種ステンレス鋼に対して問題なく溶接が可能であり、健全な中空試験片を作製できること、ならびに安定した試験実施が可能であることを確認しました。 ・本クリープ試験法は、大気環境下で優れた耐酸化性を有する耐熱材料に対して、クリープ特性に及ぼす高温水素環境の影響を評価する試験法として有効です。

 3.本研究が実社会にどう活かされるか

 2050年カーボンニュートラルの実現には、エネルギー貯蔵媒体としての水素利用が不可欠であり、水素製造から水素発電、水素エンジン、水素還元製鉄等の水素利用技術の成否が重要となります。 本事業で構築した高温水素雰囲気クリープ試験法は、これらの水素利用技術を支える耐熱構造材料の耐久性・信頼性評価技術として活用されることが期待されます。特に、高温水素環境下における耐熱材料の寿命評価や材料開発に貢献することで、カーボンニュートラル社会の実現に資することが期待されます。

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図3 製作したクリープ試験機の模式図
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図4 製作した水素雰囲気クリープ試験機の概観写真 (左;電気炉、ロッド部、右:水素発生・導入部)
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図5 水素/空気環境および空気/空気環境でのクリープ試験 により得られたSUS316L試験材のクリープ曲線